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アウシュヴィッツ強制収容所を訪れて感じたこと(世界一周277日目)

第二次世界大戦時にナチス・ドイツユダヤ人の強制労働と絶滅政策推進のために利用した強制収容所のひとつであるアウシュヴィッツ強制収容所。正式名称はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所と言い、元々ポーランド軍の兵士宿舎であった第一強制収容所アウシュヴィッツ)と、収容者の増加に伴って増設された第二強制収容所(ビルケナウ)で構成されています。

 

ここからは、総称としての「アウシュヴィッツ強制収容所」という表現を使って感想を記していきます。
 
 
ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害については、学生時代に歴史の授業を受けたり、『シンドラーのリスト』『ライフ・イズ・ビューティフル(舞台はイタリアですが)』等の映画を観たりして大まかな概要は知っていたものの、これまでは非常時に人間が為す残酷な所業を積極的に見聞きしようとすることはありませんでした。今回も、過去の事実に目を向け学ばなければならないという理性と、人間の恐ろしい振る舞いを知りたくないという感情が混在していましたが、この機を逃したら後悔すると思い直し足を運ぶことに。
 
現在博物館になっている第一強制収容所は入場料がかからないものの、混雑する10時から16時はツアー以外は入場不可(月により時間帯は変化する)。インターネットで情報収集すると、博物館は広大かつ説明文も充実していないためガイドなしでは理解を深めるのが困難とのこと。しかしツアーを予約しようと動き始めたのが数日前と直前だったこともあり、私たちがKrakowに滞在する日程の英語ツアーは全て予約済み。現地で当日参加できるツアーがないか相談しようかと覚悟し、念のため再度ツアーの予約ページを確認すると奇跡的に10人分の増員があり、無事に予約することができたのでした。
 
 
当日は晴天。Krakow(クラクフ)から1時間半程バスに揺られ、アウシュヴィッツ強制収容所があるOswiecim(オシフィエンチム、ドイツ語名:アウシュヴィッツ)という街へ。ツアー後に再度個人で博物館を見学するためにチケットを入手し、ガイドに続いて第一強制収容所へ。
 
入り口には、「働けば自由になる」という意味の一文が掲げられています。もちろん、これはナチス・ドイツの嘘。

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敷地は二重の鉄条網に囲われ、収容所やガス室の他、一見するとそれとはわからない銃殺刑がおこなわれた石の壁や絞首刑のための鉄のパイプが配置されています。

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第二強制収容所には、アウシュヴィッツ強制収容所の象徴とされる敷地内に引き込まれている鉄道が残っています。

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ガス室は6棟も存在したようですが、証拠隠滅のためナチス・ドイツにより破壊され原型を留めていません。

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ガイドの話から、ナチス・ドイツ軍が人の心理を理解した上で、非情なまでに効率的に施設を運営し目的(=アーリア人の勝利)を達成しようとしていたことを感じさせられました。例えば、
  • 被収容者の金品を奪うため、移住させる際にあえて「貴重品を家に置いて行け」と伝えた(家に戻れないのではないかと疑った人々が金品を持参した)
  • 現場で混乱が生じないよう、たとえ健康でも子供を持つ女性は(強制労働ではなく)子供と共にガス室に送った
  • 死者の骨や灰、髪の毛を肥料や原材料として利用したり、被収容者の排泄物を再利用できないか研究が進められていた
等々。人間が、「目的」を盲信することでここまで冷酷に淡々と「任務」を遂行できるものであるとすると、多様な価値観が存在し経済的な格差が広がる現在において、テロや戦争は永遠になくならないのではないかと暗鬱たる気持ちになります。
 
また、思想や価値観の異なる人々を含めてコミュニティーを形成することの難しさも感じています。今回、短期間の内に様々な国を訪れ、国のあり方や人々の振る舞いを意識的、無意識的に比較することによってものの見方が変化したり強化されたりしました。しかしそれは固定観念でもあり、今のところ価値観が全く合わない人々とは距離を置く以外の選択肢がないと感じています。もちろん、個人として付き合う際には先入観を持たずに関係を築くことを旨としています。しかしながら、例えば生活様式や振る舞いが異なる人と同じコミュニティーで生活することになり、自分が被る不利益に対して話し合いでも解決せずに相手が自分の権利ばかりを主張し続ける場合、自分の生活を守るために相手を排斥するという思考になる可能性は十分あるのではないでしょうか。ナチス・ドイツの人種差別や大量虐殺は許されるべきものではありませんが、そこに至る種は自分の中にも存在する可能性を認識させられました。
 
さらに、ナチス・ドイツのおこないは非人道的な犯罪として語り継がれ、アウシュヴィッツ強制収容所は「負の歴史遺産」に登録されていますが、現在でも戦争や内戦はなくならず大量殺戮や人道に反する犯罪はかたちを変えて続いています。ユダヤ人の大虐殺や日本への原子爆弾の投下等、過去に起こった象徴的な出来事だけに注意を払うのではなく、そうした過去を踏まえて現在おこっている人道危機にこそ注意を向け、行動を起こす必要があるのではないかと考えさせられました。
 
 
アウシュヴィッツ強制収容所では、愛する人と引き離され、有刺鉄線で隔離された場所で毎日死を感じながら厳しい労働に駆り出され、それでもわずかな希望を持ちながら収容されていた人々のことを想像し心が締め付けられるようでした。同時に、上述してきたようなことを理性的に考えながら過ごした1日となりました。
 

 

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クラクフからバスで2時間弱でアクセスできるアウシュヴィッツクラクフ市内や、クラクフからほど近い世界遺産ヴィエリチカ岩塩坑の観光と合わせて2泊3日の旅がおすすめです。

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