火山と水の王国アイスランド2/4:過酷なフィムヴォルズハゥルストレッキング(世界一周306・307日目)
アイスランドのハイライト、Fimmvorduhals(フィムヴォルズハゥルス)コースでのトレッキング。私たちは、Skogafoss(スコゥガフォス:地図のA地点)という滝の上流から出発し、氷河の間を通ってThorsmork(ソゥルスモルク:同B地点)という渓谷までの片道約30kmのルートを2日間で往復しました。
Fimmvorduhalsはアイスランドで1、2を争う人気のトレッキングコースですが、気候条件が厳しいためトレッキングができるのは6月から9月の間に限定されています。私たちは他のヨーロッパ諸国を旅行しながら6月になるのを待ち、満を持してアイスランドに足を踏み入れたのですが、今年は山開きが遅かったのか6月上旬でもコースは閉鎖されていました。宿泊を予定していた山小屋に相談してみると、「すでに数名歩いてきているが、公式には山開き前なので天気予報を確認した上で自己責任で挑戦するように」との回答。
幸いにも、天気予報ではトレッキングを計画していた2日間は快晴の予報。不安を抱きながらも、アイスランドに来たからには大自然の中を歩いてみたいという思いを捨てられず、危険を感じた場合は引き返すと決めて出発しました。
写真では切れていますが、右の方に据え付けられているアルミ製の階段でSkogafossの落ち口まで約60m上ります。
地面の凹凸に合わせて上ったり下ったりしながら上流に向かって川沿いを歩きます。ここでは、川の流れで大地が侵食されて峡谷が形成されていく様子が伺えます。
8km地点の橋が架かっている辺りから地面に転がる石が大きくなり足元が悪くなります。川沿いを離れるため風景の変化も少なくあまりおもしろくない道のり。
途中ですれ違った外国人(なぜか裸足)に道の状況を聞くと、「頂上に少し雪が残っているが問題なく歩ける」と言うので安心して歩を進めていましたが、徐々に視界に雪が入るようになり、最終的には一面雪景色。
それでも裸足の彼の言葉を信じ、この雪原を越えればまた山道になるだろうと意を決して普通のトレッキングシューズのまま雪の中に足を踏み入れる私たち。しかし、自然はそう甘くはなく、いつ終わるかもわからない高低差の激しい雪原の中を延々歩き続けたのでした。今思い返せば、裸足の彼はこの雪で靴が濡れてしまい乾かしながら歩いていたのかもしれません。
トレッキング開始から5時間半でようやく山頂に到着。遠くに見えるのが火山の噴火でできたMagni(マグニ)という名のクレーター。慣れない雪道で滑ったり踏ん張ったりしていつもと違う筋肉を使い、この時点で疲労困憊。トレッキングシューズには水が滲み込み最悪の状況です。
銀世界を抜けたと思ったら、次に現れたのは崖のような急斜面。足元は砂利で、慎重に足を踏み出しても体重をかけると滑るという恐怖の道。その後も、左右が深い谷になっている峰でロッククライミングのような崖下りを経て、ようやく辿り着いた平坦な場所から来た道を振り返って撮影した写真がこちら。白くまだらに雪の残る頂上から下ってきたとは信じられないような険しい道。翌日は同じ道を引き返すことを思うと気が重くなります。
右手には氷河も見えました。
この後は雪が再び現れることもなく、景色を楽しみながら川岸へと下りていきます。
対岸には建物の影も見え、あと少しで到着かと期待しましたが、そう甘くはありません。そもそもこの川岸、川幅は狭いのに岸の部分がとてつもなく広く、砂と小石が混じっているためとにかく歩きにくい。私は疲労と残りのルートの想像がつかない精神的負担で魂が抜けたようになり、道案内を夫に託して黙々と歩くことしかできませんでした。
10時間弱かけて辿り着いた宿は、シャワーは水が飛散して洗いにくく、ベッドリネンも提供されない等、決して居心地のよい場所ではありませんでしたが、壁と屋根に囲まれた暖かい場所で眠ることができるというだけでとてもありがたいものでした。
死んだように12時間眠って体力を回復した私たちは、気が進まないながらも来た道を引き返すために翌朝宿を出発。私は股関節の筋肉痛がひどく、筋肉を使って足の上げ下げができない状態だったため、手で太腿を持ち上げながら何とかレンタカーを置いていたSkogafossに戻ったのでした。今までに経験したことのない辛いトレッキングでしたが、アイスランドの容赦ない自然を体感することができ、心身の痛みと共に深く記憶に刻み込まれています。
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